糖尿病の3大合併症のひとつに糖尿病性腎症があり、この疾患は重症化すると、移植治療など以外では、人工透析によって命を維持するしか方法がなくなってしまうため、QOLの観点からも、医療費適正化の観点からも、重症化予防に力を入れるべきとされ、国や自治体でもさまざまな取り組みが進められています。
ソーシャル・インパクト・ボンドで重症化を防ぐ!
そうした取り組みの一環として、神戸市は20日、一般財団法人社会的投資推進財団(SIIF)、株式会社DPPヘルスパートナーズ(DPP)、株式会社三井住友銀行、株式会社SMBC信託銀行とともに、民間からの調達資金を公的サービスに用いる「ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)」の仕組みを導入することを決めたと発表しました。
日本国内では初めての本格的なSIB導入例となり、糖尿病性腎症などで人工透析にいたるリスクが高い人を対象として、受診の勧奨や保健指導を積極的に実施、重症化を未然に防ぐ体制を整えていくとしています。
SIBとは、福祉や教育など社会的な課題の解決を図るとともに経済的利益を追求する投資行動をうまく促進させる、社会的インパクト投資のひとつで、資金提供者から調達する資金をもとに、行政機関などから委託を受けた民間事業者が公的サービスを実施、成果に応じて資金提供者に利益を還元する仕組みです。2010年に英国で始まった仕組みで、すでに海外では60件以上、約200億円の実施事例が生まれてきています。
人工透析への移行率を抑制、達成に応じ出資者にもメリット
今回の取り組みで神戸市では、同市の国民健康保険被保険者のうち、糖尿病性腎症などの患者でとくに人工透析への移行リスクが高いと判定される、未受診および治療中断中の人約100人を対象に、重症化予防のプログラムを適用、通常年約10%といわれる、第4期から人工透析を要する第5期への病態進行移行率を抑制することを目指します。
具体的には、神戸市から委託を受けたDPPヘルスパートナーズが医療機関への受診勧奨や、食事療法などの保健指導を実施、三井住友銀行、個人投資家、SIIFが資金提供者となって出資を行います。SMBC信託銀行は、資金調達のための信託機能を提供し、またSIIFは中間支援組織として、プロジェクト全体の管理運営など支援を担当するとのことです。
実施期間は2017年7月~2020年3月、事業費として約2,400万円を予定し、成果指標は保健指導プログラムの修了率と生活習慣改善率、腎機能低下抑制率と設定されています。
この仕組みを導入することで、神戸市はプロジェクト実行にかかる初期投資を民間資金で賄い、財政的なリスクを抑えながら、新たな取り組みを積極的に開始できます。参加事業者は成果指標を行政と共有し、それを可視化していくことで質の高い柔軟なサービスが提供できるようになり、資金提供者は社会的課題の解決への貢献と新たな資金運用、利益獲得の機会を得られると見込まれます。
そうして各所にメリットをもたらしながら、患者のQOL向上と健康寿命の延伸、さらには社会の医療費適正化が図れるならば、これほど理想的なことはありません。今後の展開が期待されます。
(画像は神戸市プレスリリース添付資料より)

神戸市 プレスリリース
http://www.city.kobe.lg.jp/神戸市 プレスリリース 添付資料
http://www.city.kobe.lg.jp/