糖尿病を発症すると、さまざまな合併症や他の疾患における発現リスクが高まることが知られ、糖尿病の本当の恐ろしさはこうした合併症にあるともいわれます。そうした合併症の中でも、とくに代表的なものは3大合併症とされる糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、そして糖尿病性腎症です。
末期腎疾患、透析治療に進行しやすい糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は、糖尿病の細小血管合併症として発生するもののひとつで、血糖コントロール不良な状態が長く継続されたり、繰り返されたりすることにより、糸球体で硬化病変が生じて腎臓の機能に障害が発生、蛋白尿やネフローゼ症候群などを経て、慢性腎不全にいたるものです。
あまり自覚症状のないままに進行しやすく、放っておくと末期腎疾患状態にいたり、透析治療を導入しなければ命の危険が生じるというケースが少なくありません。よって、早期治療が非常に重要となるのですが、この糖尿病性腎症では、予後を予測したり、進行をみたりするための確立されたマーカーが未だ存在しておらず、信頼できるマーカーを見出すことが喫緊の臨床課題となっています。
このマーカーとして、トリプトファンが有用なのではないかとする最新の研究結果が、このほど「Journal of Diabetes Investigation」オンライン版に6月26日付で掲載されました。
研究を行ったのは、Chien-An Chou氏、Szu-Tah Chen氏らのグループで、彼らは2013年9月から2015年9月にかけ、糖尿病性腎症としての慢性腎臓病を発現している患者52人を対象に、175種類の代謝産物に関する血清中の値を測定し、腎臓病の進行と関連する物質を探し出すことを試みています。
トリプトファン低値患者でeGFRが急速に低下
分析の結果、26の代謝産物が慢性腎臓病の重症度と有意に関連していることが明らかとなったそうです。そこで、研究グループはこれらの値に注目しながら、被験者における腎機能の連続変化を12カ月間追跡調査し、推算糸球体濾過量(eGFR)の急速な低下といえる5%以上の持続的な減少率の発生に従いながら、代謝産物と腎機能の状態変化を比較検討しました。
その結果、トリプトファンがeGFRの急速な低下と有意な関係性を示し、トリプトファンの血清濃度が44.20μM未満の低値となったとき、感度55.6%、特異度87%という最大の予測能をみせることが分かったとされています。
トリプトファンは必須アミノ酸のひとつであり、健康維持に欠かせない物質で、多様かつ複雑な代謝経路により、体内でさまざまなかたちへと変化、それぞれに重要な働きを担っています。蛍光法などでの測定が可能で、肝機能障害における指標のひとつになるとも報告されるなど、注目されることも多いものです。
今回の結果から研究グループでは、トリプトファン低値、とくに44.20μM未満のレベルは、eGFRの急速な低下と有意に関連しているため、糖尿病性腎症の有益な予後マーカーとして活用できる可能性が高いと指摘しました。
(画像は写真素材 足成より)

Journal of Diabetes Investigation : Tryptophan as a Surrogate Prognostic Marker for Diabetic Nephropathy
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdi.12707/full