2型糖尿病の治療においては、さまざまな治療法が開発されてきており、運動療法、食事療法に加え、薬物療法でも多様なアプローチによる薬剤が用いられるようになっています。こうした多様な治療薬が存在する中で、このほど、とくに頻繁に使用されているメトホルミンに関する注目の研究成果が発表されました。
重い副作用として知られる乳酸アシドーシス発症
この研究報告は、Tomoko Oyaizu-Toramaru氏、Yoji Andrew Minamishima氏らからなる日本の研究グループによってなされたもので、メトホルミン投与における深刻な副作用の乳酸アシドーシスに有効な薬剤を発見したとしています。論文は「Molecular and Cellular Biology」オンライン版に6月12日付で掲載されました。
メトホルミンは、世界で最もよく用いられている2型糖尿病治療薬のひとつで、血糖降下作用だけでなく、がん細胞の増殖を抑制したり、老化を抑制して寿命を延伸したりする効果もあるとされるなど、優れた働きをする薬剤として知られています。
しかしその一方で、この薬剤に特有の副作用として、血液中に乳酸がたまり血液が酸性になる、乳酸アシドーシスを発現することがあります。主に腎臓病や肝臓病、心臓病などの持病がある人、腎機能が相当程度低下している人などで起こりやすく、脱水状態でも引き起こされやすくなります。
乳酸アシドーシスを発現すると、吐き気や腹痛などの胃腸症状をはじめ、倦怠感や手足の震え、過呼吸、動悸などが生じ、意識が低下して死にいたるケースもあることから、十分な注意が必要とされてきました。
マウス実験でPHD阻害剤の有効性を確認
そして、こうした副作用としてのメトホルミン関連乳酸アシドーシス(MALA)には、対症療法以外に有効な治療法がないことも大きな臨床的課題です。そこで研究グループでは、この治療薬候補を検討、酸素濃度センサー分子のプロリンヒドロキシラーゼ(PHD)に着目しました。
PHDを阻害する薬剤は、糖の分解を強めることで生じる乳酸塩の排出を促進させる転写因子、HIF(低酸素誘導性因子)を活性化させるほか、循環する乳酸濃度の低下に寄与する肝臓での乳酸からの糖新生を働きとして高める作用があることが、すでに報告されています。
そこで研究グループは、メトホルミンの投与と乳酸の腹腔内注射で、メトホルミン関連乳酸アシドーシスを発現させたマウスを用い、このPHD阻害剤が効き目を発揮するか調べました。すると、肝臓および腎臓での糖新生に関与する遺伝子発現レベルが有意に増加し、血中乳酸の取り込みが亢進することが確認され、マウスの生存率も大幅に改善されたそうです。
また、慢性腎疾患(CKD)を有するモデルマウスでMALAを発現させた場合でも、生存率が改善、治療薬として有効である可能性が高いことを見出しました。
これらの結果から研究グループでは、メトホルミン治療における深刻な副作用としてあるMALAについて、PHDが注目すべき新たな治療標的であり、これを阻害する薬剤が今後、特効薬となる可能性があるとまとめています。より安全な治療法の確立に寄与することが期待されるでしょう。
(画像は写真素材 足成より)

Molecular and Cellular Biology : Targeting oxygen sensing prolyl hydroxylase (PHD) for metformin-associated lactic acidosis treatment
http://mcb.asm.org/content/early/2017/06/07/MCB.00248-17