糖尿病の代表的な合併症に糖尿病性腎症があり、これが重症化することで継続的な人工透析治療を受けなくてはならなくなっている患者さんは少なくありません。人工透析が必要となる原疾患が糖尿病性腎症である人は47.7%と、この治療においては最も多いこともそれをよく示しています。
自治体、広域連合、医療関係者のさらなる連携体制構築で重症化予防を強化!
近年の日本における新規人工透析導入患者は約31,000人にのぼり、世界主要国のなかでは人口あたりの数が最も多くなっています。透析治療は患者のQOLを著しく低下させることはもちろん、1人月40万円、国全体では年間約1.57兆円が医療費として必要になるなど、医療費全体における適正化の面でも大きな社会的課題です。
こうした状況を改善するため、厚生労働省は10日、健康寿命の延伸と医療費の適正化を目指す取り組みのひとつとして設置していた、市町村、後期高齢者医療広域連合における効率的かつ効果的な重症化予防プログラムの実践・展開を目的とする、重症化予防(国保・後期広域)ワーキンググループの議論をとりまとめ、報告書として公開しました。
「糖尿病性腎症重症化予防の更なる展開に向けて」と題されたこの報告書では、重症化の予防にスポットを当て、とくに重要な関係者となる都道府県、市町村、広域連合、糖尿病対策推進会議、かかりつけ医・専門医などのそれぞれが担う役割を整理し、取り組みを進めるにあたって実施すべき事項を詳細にわたって示し、協力・連携体制を強化していくこととしています。
まず基本的な取り組みとして、市町村などの実施においては庁内連携、地域連携、事業計画策定、事業実施、事業評価、次年度事業の修正をPDCAサイクルで、的確に実施することが重要であり、とくにあらかじめ地域における医師会など関係者と密接に連携することが必要と明記しました。具体的には、医師会などに市町村から課題や事業のねらいを提示すること、連携方策について互いに協議し、共通認識の形成を図ることとされています。
各部門の取り組み見直しと国からの支援で重症化予防を全面バックアップ
今後のさらなる展開に向けた、それぞれの取り組みにおける現状の問題点と改善策についても示され、市町村・都道府県関連では、重症化プログラムなど取り組み未実施の自治体について、首長や幹部らがその意義を理解しリーダーシップを発揮、優先順位を上げて取り組むよう求めるとしたほか、組織の縦割り弊害をなくすため、担当課縦割りを排除、一体的な取り組みとするよう指導しています。
また医師会、都道府県糖尿病対策推進会議との密な連携やCKD対策ネットワークの活用も十分に行い、情報提供はもちろん取り組みのあり方や実施体制に関する相談・合意形成を積極的に行うよう求めました。かかりつけ医などとの連携では、とくに受療中断者や治療中患者を対象とする場合の個別連携・協力も必要としています。
糖尿病対策推進会議などに対しては、市町村など行政との連携不足を解消し、より個々の支援を想定した取り組みを検討することのほか、かかりつけ医・専門医だけでなく歯科・保健・看護・栄養・薬剤など幅広い専門職と連携が図れる体制づくりが必要であると指摘しました。あわせて学会などでのシンポジウムや研修会を関係団体共同で開催し、会員への連携体制周知と啓発を進めるよう訴えています。
国保連には、保険者保有データが十分に活用されていないとして、健診データと合わせレセプトデータから得られる受診状況・服薬状況データの活用を再検討すること、支援・評価委員会やKDBを充実化し市町村支援をさらに進めることとしました。
全体では、対象者や家族、近隣住民などへの分かりやすい啓発活動や、患者が自主的に取り組みやすい個人インセンティブ併用の検討、住民を受け手から担い手とする健康なまちづくりの工夫を進め、より効果的な介入方法、相関の高い取組表か指標を開発するよう努めることを課題にしています。また、高齢者を支える地域包括ケアシステムの構築を念頭に、重症化予防へ取り組むことも重要とし、保健・医療・福祉などの連携強化も目標に掲げています。
国からも研究の推進や取り組み状況の把握および情報提供、先進的事例の収集と啓発、支援金制度などインセンティブ活用の進化、関係施策との連携といった支援を進めるものとし、国をあげた重症化予防の取り組み強化を推進すべきとしています。
留意点としては、個人情報の取り扱いに関する注意や地域の実情に応じた外部委託事業者への適切な指示出し、国保加入前からの予防・健康づくりを目指した被用者保険との連携、若年期から連続した取り組みとして高齢者への対応を充実化させることなどが挙げられました。
厚生労働省では、このワーキンググループによるとりまとめをもとに、今後、糖尿病性腎症重症化予防の取り組みがいっそう推進されるよう、周知・支援策の充実に努めていくとしています。
(画像は厚生労働省ホームページより)

厚生労働省 報道発表資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000170308.html