食事や間食をすれば、誰でもその直後から血糖値が上がります。健康な人であれば、ここでインスリンというホルモンが十分に分泌されて働き、エネルギー源として取り込む機構を促進させてコントロール、徐々に血糖値が低下して、数時間でもとの値にまで戻り、また空腹を感じるようになるというサイクルが成立しています。
エキソフィリン-8欠損マウスではインスリン分泌が低下
ところが糖尿病になると、このインスリンの量が低下したり、インスリンの働きが悪化したりして、糖が取り込まれることなく血液中にあふれて高血糖を繰り返すようになり、全身の血管を傷つけてさまざまな障害をもたらすのです。
そのため言うまでもなく、インスリンが重要な鍵を握っているのですが、このインスリンについて、ある特定のタンパク質が他と結合し複合体を形成することで、その分泌を促進させていることが最新の研究で新たに判明しました。研究を行ったのは、Fushun Fan氏、Kohichi Matsunaga氏、Tetsuro Izumi氏らのグループで、その成果をまとめた論文は「eLIFE」に7月4日付で掲載されています。
研究グループは、ホルモンや神経伝達物質などの分泌に関与し、内分泌細胞などに存在するタンパク質群のひとつ、エキソフィリン-8に着目しました。エキソフィリン-8は、微粒子が膜と融合するのを助け、アクチン皮質内に分泌された物質を固定する役割を果たすと考えられていますが、その正確な役割はいまだ明らかとなっていません。
そこでこのエキソフィリン-8が欠損すると、どのようなことが生じるか検証するため、これを産生できない変異マウスを作製して観察を行いました。その結果、この変異マウスではインスリンをためた微粒子が細胞膜周辺に集まらなくなり、インスリンの分泌が減少、正常マウスよりも血糖値が高くなることが分かったそうです。
メカニズムを応用した新規糖尿病治療薬開発に期待
このときのエキソフィリン-8は、これまでに知られている物質との直接的な相互作用を働かせるのではなく、RIM-BP2を介した特定の形態のミオシン-VIIaとの間接的な相互作用により、アクチン皮質のネットワーク内に微粒子を蓄積させる働きをしていることが分かりました。蓄積がうまく進まなければ、血糖値に対応したインスリン分泌がなされなくなってしまいます。
さらに研究を重ねたところ、エキソフィリン-8は、Cav1.3、RIM、Munc13-1などにも影響を与えていることが明らかとなり、他の2タンパク質と結合した複合体である、エキソフィリン-8-RIM-BP2-ミオシン-VIIa複合体を形成することで、それぞれがともに働き、より効率よくインスリンを分泌できるようにしていることも判明しました。
エキソフィリン-8の欠損マウスの膵島では、β細胞周辺での代謝に関連する微粒子局在が失われており、インスリン分泌障害を示すようになっていたことも報告されています。
こうした一連の結果から研究グループでは、エキソフィリン-8に着目した薬の開発を行うことで、膵臓からのインスリン放出に問題が生じている糖尿病の治療につなげることができるのではないかとしています。
(画像は写真素材 足成より)

eLIFE : Exophilin-8 assembles secretory granules for exocytosis in the actin cortex via interaction with RIM-BP2 and myosin-VIIa
https://elifesciences.org/articles/26174