代表的な経口血糖降下薬のひとつであるメトホルミンは、2型糖尿病の治療薬として用いられており、通常1型糖尿病には使用されません。しかし、このメトホルミンが1型糖尿病患者にとっても、長期的なリスクの低減という観点から、有用である可能性が出てきています。
REMOVAL試験の結果を報告
John R Petrie氏らの研究グループは、1型糖尿病患者を対象に、二重盲検ランダム化、プラセボ比較試験として実施したREMOVAL試験の結果を分析し、まとめたものとして、メトホルミンの効果を示す論文を発表、「Lancet Diabetes & Endocrinology」オンライン版に6月11日付で掲載されました。
REMOVAL試験は、オーストリア、カナダ、デンマーク、オランダ、英国の5カ国23施設で実施された試験で、40歳以上の成人1型糖尿病患者を対象に実施、最低5年間の追跡調査を行って、心血管系疾患の発現リスクを検証しました。
2011年12月14日~2014年6月24日で、参加した1型糖尿病患者は493人、リスク因子や血糖コントロールを調整する3カ月の期間を挟んだ上で、219人を1日2回経口メトホルミン1,000mgを投与する群、209人をプラセボ(偽薬)を投与する群に、それぞれランダムで割り付けています。
研究グループでは、それぞれの群について、頸動脈内膜の厚さやHbA1c値、LDLコレステロール値、推定糸球体濾過率(eGFR)、副腎アルブミン尿、網膜症の有無、体重、インスリン用量、内皮機能などを測定し、リスクの比較評価・検討を試みました。
リスクが長期的に低下、一定の有効性あり
試験の結果、頸動脈内膜の厚さにおける平均では、メトホルミン投与による有意な差は認められなかったものの、最大値ではプラセボ投与群に比べ、有意に減少していることが認められ、その中央値は年あたり0.013mmの低下になっていることが分かりました。
HbA1c値も、3年間の平均では、メトホルミン投与群でプラセボ投与群より有意に低下しましたが、3カ月経過時点などでは低下に有意な差が認められなかったそうです。体重やLDLコレステロール値については、3年以上のメトホルミン投与がなされることによって有意に低下し、推定糸球体濾過量は有意に増加していました。
一方、必要とされるインスリン量に変化はみられず、反応性貧血指数によって評価された内皮機能や網膜症の発現にも、メトホルミン投与とプラセボ投与で、違いは確認されませんでした。なお治療を続けられなくなった被験者の数は、メトホルミン投与群で59人、プラセボ投与群で26人となり、主な原因は消化器系の副作用によるものだったとされています。メトホルミンによる、低血糖症の発現増はみられていません。
これらの試験データから研究グループでは、現在の治療ガイドラインで示されているように、成人1型糖尿病の血糖コントロール改善を目的としたメトホルミンの使用は支持されないが、心血管系疾患の発現リスクを長期的に低下させる、リスク管理という観点からは、投与が有効である可能性があるとまとめています。
(画像は写真素材 足成より)

Lancet Diabetes & Endocrinology : Cardiovascular and metabolic effects of metformin in patients with type 1 diabetes (REMOVAL): a double-blind, randomised, placebo-controlled trial
http://www.thelancet.com/