まだ日本ではあまり一般的ではありませんが、糖尿病や高血圧、肝機能障害、睡眠時無呼吸など肥満に伴う健康障害、合併疾患が進行していたり、きわめて高度な肥満状態にあったりする肥満症患者の場合、減量手術が検討されることがあります。
ルーワイ胃バイパス手術後にみられる他の減量手術法との違い
減量手術にはさまざまな方法がありますが、米国では同国肥満外科学会などによってもスタンダードとして推奨される方法で、よく行われている代表的なものに、ルーワイ(Roux-en-Y)胃バイパス手術があります。
ルーワイ胃バイパス手術は、胃を上下に分け小腸を切断、上部の小袋に小腸をつなげ、その途中に胃の下部とつながっている小腸をつないで、胆汁と膵液が流れ込むようにします。胃の小袋が少ない量で満腹感を与え食事摂取量を無理なく制限させるほか、つなぐ小腸の長さでエネルギーの取り込み量を調節、適正な体重へと導いていきます。
このルーワイ胃バイパス手術について、術後に他の手術法とは異なる特徴的な傾向がみられることが、Natureの「The ISME Journal」で報告されました。論文は5月26日付で掲載されています。
研究を実施したのは、Zehra Esra Ilhan氏、Rosa Krajmalnik-Brown氏らのグループで、もうひとつの代表的な減量手術の方法である腹腔鏡下調節性胃バンディング術(胃緊縛法)などと術後状態を比べることにより、その特色を明らかにしました。
なお、胃バンディング術は、胃の上部に特殊なバンドを巻いて締め付け、強制的に胃を2つの部分に分けることで、食事摂取量を制限するもので、腹腔内にバンドの締め付け具合を調節できる器具を埋め込み、状態に応じてその度合いを変えるようにすることが一般的となっています。
術後に腸内細菌叢が変化、代謝物にも反映
研究グループはまず、ルーワイ胃バイパス手術では、胃バンドル術などに比べ、より大きな減量効果を発揮させられていたことから、腸内細菌叢(微生物)の組成やその代謝に大きな変化をもたらすのではないかと仮説を立て、多元的アプローチにより、手術前の肥満度と体重、術後の肥満度、体重、糞便中の微生物群、代謝産物などの分析を行いました。
その結果、ルーワイ胃バイパス手術を受けた患者では、術後の微生物群構成に大きな変化がみられ、正常体重者や腹腔鏡下調節性胃バンディング術を受けた患者などとは異なる状態になっていることが判明したそうです。
微生物の違いは、それぞれ代謝物の違いにも反映されており、腸内細菌叢としての多様性は、胃バンディング術後の患者群に比べ、ルーワイ胃バイパス手術後の患者群で、有意に高まっていることも確認されました。
とくにエリテマトーデス、ベイヨネラ、ストレプトコッカスなどがルーワイ胃バイパス手術後の患者でより多く存在し、これらの存在量と多様性が体重減少と正の相関関係にあったと報告されています。
腸内細菌叢の多様性は、さまざまな疾患の発現と関係していることが明らかになってきており、糖尿病や肥満症の患者では有意に減少していることがすでに報告されているため、この変化は大いに注目されるところでしょう。
研究グループも今回の結果を受け、ルーワイ胃バイパス手術が、腹腔鏡下調節性胃バンディング術など、その他の減量手術よりも、より大きな体重減少効果を得られるものとなっていることに、この腸内細菌叢の変化が関連していることが強く示唆されたとまとめています。
(画像は写真素材 足成より)

The ISME Journal : Distinctive microbiomes and metabolites linked with weight loss after gastric bypass, but not gastric banding
http://www.nature.com/