ほとんどが1型糖尿病患者での発症ですが、糖尿病患者には糖尿病性ケトアシドーシスという症状が現れることがあります。これは一種の急性代謝失調で、極度のインスリン不足やインスリン拮抗ホルモンの増加によるインスリン作用の弱まりによって発症するものです。エネルギーを生成する過程で副産物として生まれるケトン体が血液中で急激に増え、血液が酸性となって異常が発生します。
SGLT2阻害薬とDPP4阻害薬での発現リスクを比較検討
糖尿病性ケトアシドーシスでは、悪心や嘔吐、多尿、腹痛といった症状が現れ、まれながら脳浮腫が生じることもあるほか、重度になると昏睡、死亡にいたる恐れがあり、発症した場合は早期に医療機関で適切な処置を受けることが重要です。
この糖尿病性ケトアシドーシスについて、糖尿病治療に用いる薬剤でリスクに違いが生じるという気になる研究報告がなされました。研究を行ったのはMichael Fralick氏らのグループで、その成果をまとめた論文が「New England Journal of Medicine」に6月8日付で掲載されています。
研究グループは、米国の健康保険Truven MarketScanの患者に対する処方データを用い、18歳以上の糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬とDPP4阻害薬での糖尿病性ケトアシドーシス発症リスクの比較検討を行いました。
対象とされたのは、SGLT2阻害薬を新規に処方された患者50,220人と、DPP4阻害薬が新規処方された患者90,132人です。それぞれの患者群について比較すると、SGLT2阻害薬を処方された患者は、DPP4阻害薬を処方された患者よりも若年である傾向があり、合併症など併発する疾患は少ないものの、インスリンを受容しやすいといった特色がありました。
そこでこれら患者群での46の特徴について考慮し、Cox回帰分析で95%の信頼区間を確保すべく、傾向スコアマッチングを実施、適切なバランスをとるデータ調整を行っています。
発症リスクは約2倍、治療上留意すべきと提言
傾向スコアマッチングの実施前におけるデータ分析で、SGLT2阻害薬を用いた患者群における、治療開始後180日以内での糖尿病性ケトアシドーシスの未調整発現率は、1,000人年あたり4.9件と、DPP4阻害薬を用いた治療群の1,000人年あたり2.3件に比べ、約2倍となっていました。
また、傾向スコアマッチング実施後の解析結果でも、SGLT2阻害薬による治療群の糖尿病性ケトアシドーシス発症が、DPP4阻害薬での治療群に比べ、ハザード比で中央値2.2となり、有意に高いことが確認されています。
これらの結果から研究グループでは、SGLT2阻害薬での治療開始直後では、糖尿病性ケトアシドーシスの発症、入院にいたるケースはまれであったものの、180日以内で発症リスクはDPP4阻害薬を用いた場合の約2倍となっていたとし、このSGLT2阻害薬によるリスク増は、糖尿病性ケトアシドーシスが疑われる症状を呈した患者の治療において、考慮されるべき重要な点のひとつであるとまとめました。
(画像は写真素材 足成より)

New England Journal of Medicine : Risk of Diabetic Ketoacidosis after Initiation of an SGLT2 Inhibitor
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1701990