脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種であるアディポネクチンは、近年、糖尿病や動脈硬化症など心血管系疾患を予防する効果があるとみられ、高い注目を集めるところとなっています。食欲を抑制し、体重管理にもよい影響が期待できるなど、さまざまな面で関心を集めるアディポネクチンについて、日本人を対象とした最新の研究結果が発表されました。
日本人におけるアディポネクチンの影響を検証
この研究報告は、Atsushi Goto氏らJPHC試験(Japan Public Health Center-based Prospective Study)と名付けられたテストに携わった研究グループによってなされたもので、「Diabetes Research and Clinical Practice」に5月24日付で論文が掲載されました。
アディポネクチンには、低分子量タイプ、中分子量タイプ、高分子量タイプがありますが、とくに高分子量のアディポネクチンが多いと、インスリンの働きが強まるとされ、血中濃度が高いほど2型糖尿病の発現リスクが低くなることが、過去の研究で報告されています。
アディポネクチンの血中濃度には遺伝的な影響が強いとみられ、糖尿病との深い関係性が注目されていますが、これまでに日本人を対象として検証した研究はほぼなく、科学的なエビデンスが不足していることから、今回研究グループは、多目的コホート研究のJPHC試験におけるデータを用い、一般的な日本人での血中アディポネクチン濃度と2型糖尿病との関連を調べました。
日本人でもアディポネクチン濃度が高いと糖尿病リスクが低減
研究グループは、日本国内における複数の地点からJPHC試験に参加した被験者のうち、研究開始時点で糖尿病の診断を受けていなかったものの、フォローアップ期間の5年間で新たに糖尿病を発症した417人と、発症しなかった1,197人のデータを用い、検証を行いました。
なお、この糖尿病患者群と未発症群の比較においては、年齢や性別、BMI値、喫煙歴、身体活動量、居住地域など影響を与えうる因子を調整しています。その上で、まず血中の総アディポネクチン濃度の違いにより、対象者らを4つのグループに分類しました。
データ補正後の前向きコホート分析結果で、血中の総アディポネクチン濃度が最も低い、中央値3.1マイクログラム/mLのグループを基準とすると、2番目に濃度が高いグループでは糖尿病の発現オッズ比が0.48倍になり、3番目のグループでは0.36倍、4番目のグループで0.24倍となり、アディポネクチン濃度が高いほど、2型糖尿病を発症するリスクが低くなっていることが確認されたそうです。
一方で、日本人における遺伝的な要素について、アディポネクチンの多型遺伝子配列における「+45」タイプと「+276」タイプは、血中の総アディポネクチン濃度とも、糖尿病の発症リスクとも関連していないことが判明したとも報告されました。
今回の結果からは遺伝因子による影響、効果が明らかになることはありませんでしたが、研究グループでは、一般的な日本人においても、血中のアディポネクチン濃度が糖尿病の発症リスクと強い反比例関係にあることは強く示唆されたとまとめています。
(画像は写真素材 足成より)

Diabetes Research and Clinical Practice : Plasma adiponectin levels, ADIPOQ variants, and incidence of type 2 diabetes : A nested case-control study
http://www.diabetesresearchclinicalpractice.com/