高血圧を合併する2型糖尿病の患者さんでは、とくに心血管系疾患の発現リスクが増大するため、血圧と血糖の両方を注意深く管理していくことが大切です。その際、降圧薬としてβ遮断薬と呼ばれるタイプの薬剤を用いると、心血管系イベントの発現リスクが高まることが報告されました。
ACCORD試験のデータ解析による報告
この研究報告は、1万件以上の2型糖尿病患者を対象として実施された、大規模臨床試験の「Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes(ACCORD)」試験のデータ解析からなされたもので、Tetsuro Tsujimoto氏らの研究グループが実施、論文は、AHAの「Hypertension」オンライン版に5月30日付で掲載されています。
β遮断薬は、交感神経のアドレナリン受容体のうち、β受容体にのみ遮断作用を示し、心臓の拍出力を弱めて心拍数や血圧を抑える働きをする薬剤です。一般に糖尿病患者さんへの降圧薬選択の場合、β遮断薬は糖・代謝系に影響を及ぼし、インスリン抵抗性を悪化させたり、低血糖の自覚症状を感知させにくくしたりするという性質があることから、積極的には用いられず、虚血性心疾患の既往患者のみに推奨するといったかたちになっています。
一方で、低血糖の潜在的リスクは上昇するものの、自覚症状が薄れる、交感神経系の亢進抑制がなされるとすれば、心血管系イベントの発現に対し、保護として有効に働く可能性もあることから、こうしたβ遮断薬の利用に伴う影響について、検証がなされました。
β遮断薬の利用で重度低血糖発現、心血管系イベントリスクがいずれも上昇
研究グループは、ACCORD試験のデータをもとに、傾向スコア調整を行ってCox比例ハザード解析を実施、非致死的心筋梗塞や狭心症、非致死的脳卒中、心臓血管死を含む心血管系イベントの最初の発現を主要評価項目として分析しました。
対象となった患者は、β遮断薬を利用した2型糖尿病患者2,527人と、β遮断薬を用いない2型糖尿病患者2,527人で、追跡調査期間はそれぞれ中央値で4.6年、4.7年となっています。
分析の結果、心血管系イベントの発現率は、β遮断薬使用群で有意に高く、β遮断薬を用いない群に比べると、そのハザード比は1.46になりました。また、冠状動脈性心疾患または心不全を合併する患者における心血管系イベントの累積発現率も、β遮断薬を用いた群で有意に高く、β遮断薬未利用群に比べ、リスクは1.27倍となっていたそうです。
さらに重度の低血糖発現率でみても、β遮断薬を用いた群が有意に高く、こちらのリスクは1.30倍でした。
研究グループではこれらの結果から、2型糖尿病患者におけるβ遮断薬の使用は、心血管系イベントの発現リスクを上昇させると結論づけています。
(画像は写真素材 足成より)

Hypertension : Risk of Cardiovascular Events in Patients With Diabetes Mellitus on β-Blockers
http://hyper.ahajournals.org/