糖尿病と認知症のあいだには、未だ解明されていない点も含め、さまざまな関連性があることが示唆されており、多くの研究が進められています。そうした研究成果のひとつが「Journal of Diabetes Investigation」の電子版に、9月30日付で掲載されました。
実行機能障害とグレリン血中濃度に関連性
この研究は、Siting Chen氏らの研究チームによって行われたもので、2型糖尿病患者における「Ghrelin(グレリン)」の血中濃度と認知機能の関係性について探ったものです。
研究チームでは、2015年の3月から2016年の3月まで被験者370人を集めて検討を行っています。370人のうち、212人は2型糖尿病患者で、158人は非患者の対照となるコントロール群でした。実験は、被験者から血液サンプルを取り、グレリンをはじめとする物質の血中濃度などを測定、さらにMontreal Cognitive Assessment(MoCA)による認知機能測定と、Wisconsin Card Sorting Test(WCST)による実行機能評価を行うかたちで進められました。
その結果、2型糖尿病患者の群では、年齢や教育を受けた年数、糖尿病の罹病期間、フィブリノゲン値(FBG)、HbA1c値、高血圧、ウエストとヒップの比率などがMoCAの認知機能スコアと関連していました。
グレリンの血中濃度とMoCA認知機能スコアには、有意な関連性が認められませんでしたが、一方で2型糖尿病患者におけるWCSTで評価された実行機能障害とは顕著な関係性があることが判明し、有意な予測因子と認められることが分かったとされています。
症状発現の予測に、さらなる研究にも期待
実行機能とは、目的をもった一連の行動を効果的に自立して成し遂げるために必要な機能のことで、この機能の障害は遂行機能障害とも呼ばれ、認知症や高次脳機能障害の主な症状のひとつとされています。
症状が発現すると、ひとつひとつの動作は行えても、物事の段取りをしながら計画的に実行するということが難しくなるため、日常生活における一連の行動に支障をきたすようになってしまいます。
今回、予測因子として見出された「グレリン」は、主に胃から産生され、分泌されるペプチドホルモンで、下垂体に働き成長ホルモンの分泌を促すほか、視床下部に働きかけて食欲を増進させます。
中枢性あるいは末梢性における摂食亢進や体重増加、消化管機能調節などエネルギー代謝調節に深く関わる重要な作用をもち、血糖値とも密接な関わりがあることから、糖尿病や肥満の研究で、とくに注目されてきたペプチドホルモンでもあります。
研究チームでは今回の検討結果を受け、グレリンが2型糖尿病患者の実行機能障害に対する有力な予測因子となる可能性が示唆されたほか、患者における認知機能障害の症状発現への潜在的な保護効果と関係している可能性もあるとしています。
健康寿命延伸、QOL向上のためにも、今後のさらなる研究進展が期待されるところです。
(画像はイメージです)

Journal of Diabetes Investigation : Ghrelin is a possible new predictor associated with executive function in patients with type 2 diabetes mellitus
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jdi.12580/full