糖尿病を発症すると、合併症として糖尿病性腎症からの慢性腎臓病(CKD)を発症しやすくなるほか、心血管系疾患のリスクを上昇させることなどが知られています。一方、腹部大動脈瘤(AAA)という疾患には、喫煙習慣や高血圧、加齢、家族歴などのほか、動脈硬化が主要なリスク因子として指摘されています。しかし、この動脈硬化進展と深く関わるCKDと糖尿病が、AAAに対しどのような影響をもたらすかは、不明なままとなっていました。
CKD患者ではリスク大、早期からの対応を
腹部大動脈瘤は、腹部の大動脈が正常の1.5倍以上に瘤状となって膨らんだもので、とくに男性に多いとされています。自覚症状はないことが多く、検査でたまたま発見されるケースが少なくありません。
しかし進行して周囲の臓器を圧迫するようになると、腰痛や腹痛などの痛みが生じてきます。瘤が破裂した場合、出血性ショックなどが引き起こされ、命の危険にさらされるものとなることから、破裂する前に外科的治療を行うことが必要とされています。
今回、このAAAとCKD、糖尿病がどのように関連しているのか、これまで明らかにされていなかった部分を、日本人を対象として探った研究の成果が、「PLOS ONE」オンライン版に、10月20日付で掲載されました。
研究チームは、まず2008年~2014年に、2つの医療機関でAAAと診断された患者261人と、性別や年齢をマッチさせたAAAを有しない患者261人を対象に、後ろ向き解析を実施し、心血管系のリスク因子とAAA発症の関連性について調べました。さらにCKD患者1,126人と、糖尿病患者400人を対象としたAAAの罹患率も調査し、検討を行ったそうです。
糖尿病とAAAの間には負の関連性を確認
この研究における心血管系のリスク因子には、糖尿病もはじめ、BMIや高血圧、脂質異常症、CKD、喫煙習慣、脳卒中などが含められています。
研究の結果、CKDの有病率は、AAAを有しない患者群に比べ、AAAの診断を受けた群で有意に高く、前者が52%、後者が65%でした。一方、関連があるのではないかとみられた糖尿病では、AAAを有しない患者群での糖尿病患者の割合は35%、AAA患者での糖尿病患者割合は17%と、逆に有病率が低くなっていることが確認され、この2疾患の間には有意な負の関連が認められました。
AAA有病率に関する調査・検討の結果としては、CKD患者1,126人におけるAAAと診断された人の割合は2.5%であるのに対し、糖尿病患者400人では0.5%でした。加齢に伴う有病率の変化傾向をみた研究でも、CKD患者では65歳以上で5.1%となり、上昇することが確認されましたが、糖尿病患者では65歳以上でも0.6%とおよそ加齢による影響はみられませんでした。
今回の研究結果から日本人の場合、CKDはAAAの罹患と相関関係にあり、独立した関連因子と認められることから、CKD患者となっている場合、よりAAAを意識した検査を積極的に行っていくことが必要であることが分かりました。
一方で、こちらも関連するのではとみられた糖尿病では、逆に負の関連が認められるという意外な結果が見出されています。これら疾患におけるそれぞれの関与の仕方は、想定される以上に複雑なものであるのかもしれません。
(画像はイメージです)

PLOS ONE : Chronic Kidney Disease Is Positively and Diabetes Mellitus Is Negatively Associated with Abdominal Aortic Aneurysm
http://journals.plos.org/