生活習慣の関与も大きく、患者の多数を占める2型糖尿病に対し、主に自己免疫反応の異常によって膵臓のランゲルハンス島ベータ細胞が破壊され、インスリン分泌機能が失われてしまう1型糖尿病は、小児期に発症することが多いとされ、小児糖尿病とも呼ばれてきました。しかし実際には30歳以降の発症も多く、小児期に多いとみるのは誤解である可能性が、最新の研究で指摘されています。
英国バイオバンクの15万人遺伝子データ解析で明らかに
この研究報告は、今年の欧州糖尿病学会(EASD 2016)において、英国・Exeter医科大学のNicholas Thomas博士から発表されたものです。Thomas博士らの研究チームは、「UK Biobank」に登録されている30~60歳の英国人152,118人のデータをもとに、1型糖尿病と関連するヌクレオチド遺伝子多型から、リスクの指標となるスコア「T1D-GRS」を算出、糖尿病のデータ解析を行ったそうです。
糖尿病患者データからは、30歳未満で1型糖尿病の比率が、それ以降の年齢層に比べて高く、30歳以降になると、2型糖尿病の割合が大きく増えていくという傾向が確認され、これまでの見解通りの結果がみられています。
しかし、30~60歳で1型糖尿病の遺伝子多型をもち、T1D-GRSの高い人も一定数存在し、あらためて1型糖尿病に関する解析を行ったところ、半数は30歳以降に発症していることが判明したというのです。
誤診も多い可能性、より個々の状況をよくふまえた診断が必要に
研究チームが全年齢層のデータ解析を行った結果、30歳未満の1型糖尿病遺伝子多型をもち発症している人は48%で、その75%が1型糖尿病と診断を受けていました。一方、残りの1型糖尿病遺伝子多型をもつ、リスクスコアの高い52%の人は、30~60歳で発症しており、全体の5.1%しか正しく診断されていませんでした。
30~60歳の糖尿病患者で、1型糖尿病のグループと2型糖尿病グループの比較を行うと、1型の方が41歳、2型が52歳と診断年齢は若い傾向にあり、またBMI指数は、1型が27kg/平方メートル、2型が32kg/平方メートルと、1型の方がスリムな体型であることが見出されました。
また1型では進行が早いのが特徴で、診断1年以内にインスリン療法を開始している割合が、1型の場合72%、2型では7%と大きな差が出ています。
Thomas博士は、30歳以降という一定の年齢を重ねた人々のあいだでは、2型糖尿病が激増し、全体のなかで多数を占めるものとなることから、似た糖尿病様症状が現れている患者で1型糖尿病の症例を正しく特定することは、小児期に比べてはるかに困難で、容易ではないだろうとしています。
そのため1型糖尿病でありながら、正しく診断されていない人が少なからず存在する可能性が指摘されていますが、その診断で有力な手がかりとなる自己抗体検査は、高額で特殊な検査となるため、日常診療で広く行うのは現実的でないともし、今回研究チームが用いた「T1D-GRS」の活用が有効となり得るとしました。
今後はまず、1型糖尿病は小児期に発症するものと決めつけるのではなく、一定の年齢を重ねたのちに生じることもあると意識をあらため、個々の病態特徴をより注意深く観察した診断と治療判断が求められることとなりそうです。
(画像はイメージです)

EASD 2016 該当研究発表
http://www.easdvirtualmeeting.org/