糖尿病でとくに恐れられるのが、数々の合併症発症であり、多岐にわたる疾患のリスク上昇です。これらは命に関わる症状であることも多く、臨床研究においても、重要なテーマとみなされています。
血管内皮の恒常性維持機構破綻で導かれる臓器の線維化に関する研究が今年度の医学研究奨励賞に
そうした糖尿病の深刻な合併症について、とくに臓器の線維化にかかる研究を進めている、金沢医科大学の糖尿病・内分泌内科学、金﨑啓造准教授が、平成28年度の日本医師会医学研究奨励賞を受賞しました。
糖尿病を発症し、血糖値が高い状態が長く続いたり繰り返されたりするようになると、徐々に全身の血管や神経で炎症による障害が進んでいきます。合併症はこれによって生じてくるのです。
3大合併症とされるものは、糖尿病性神経障害と糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症ですが、なかでも糖尿病性腎症は、高血糖により腎臓にあるごく細い血管が蝕まれていき、腎臓の線維化を引き起こして腎不全となるものです。この腎線維化に至った場合、腎機能を再び取り戻すことはできないため、透析治療を導入しなければなりませんが、こうした糖尿病性腎症からの透析患者は年々増え続けていることが知られています。
そこで、この臓器における線維化の制御を図ることが、糖尿病の合併症でも重要になります。今回、賞を獲得した金﨑氏の研究は、そうした目的に寄与する線維化メカニズムの解明に関するものです。
今後のさらなる研究発展に期待
金﨑氏の研究が注目した血管内皮細胞は、サイトカインなどの刺激によって間葉系細胞に分化し、臓器の線維化進行に深く関与することがすでに知られています。そこで同氏らの研究チームは、予備的検討により、細胞の恒常性維持に必要な、細胞がもつ細胞内タンパク質を分解するための仕組み、オートファジー(自食作用)機能の不全がインターロイキン-6に依存的な間葉系細胞分化を引き起こすことを見出しました。
これにより、従来着目されてきた、単球の機能を強め、リンパ球の増殖と機能を抑制し、強力な免疫調節剤として働く腫瘍細胞増殖因子-β2(Transforming Growth Factor-β2)に依存的な間葉系細胞分化との違いを見分け、差別化できる可能性を明らかにしています。
発表によると、今回の賞における申請では、内皮細胞がオートファジーの機能不全に陥り、血管内皮の恒常性維持機構が破綻することでもたらされる、糖尿病での臓器線維化にかかる影響と、周囲細胞との線維化を惹起するネットワークの存在と解明・解析をテーマにしたそうです。
糖尿病をはじめとする慢性炎症が引き起こすさまざまな臓器での線維化は、重篤な臓器機能不全をもたらすものであり、このメカニズムを解明することで見出される予防法や新規の治療法が医学的に重要であることはいうまでもありません。今後のさらなる研究の進展も望まれます。

金沢医科大学 お知らせ
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