今月、ドイツ・ミュンヘンで開催された欧州糖尿病学会(EASD)第52回年次学術集会において、「EASD-ノボ ノルディスク財団糖尿病賞」が発表され、英国のExeter大学のAndrew Hattersley教授が同賞に輝きました。若年発症成人型糖尿病(MODY)の原因遺伝子を特定した研究成果が評価されています。
原因遺伝子発見で適切な患者ケアに貢献
MODYは、家族性若年糖尿病とも呼ばれ、常染色体優性で発症する糖尿病です。通常は25歳以下で発症するとされ、肥満はみられず、インスリン分泌不全が生じていることが特徴で、2型糖尿病でみられるようなインスリン抵抗性は基本的に認められません。遺伝子異常を原因とする疾患であることから、根本的な治療法がなく、難病とされています。
一般的な2型糖尿病などは、多数の遺伝要因と生活習慣に由来する環境要因が複雑に絡み合って発症にいたりますが、MODYなど一部の糖尿病では、特定の遺伝子の異常で発症するかどうかが決まります。型によっては軽度の耐糖能異常や腎性糖尿のみの症状となりますが、重症のインスリン分泌不全を生じて、インスリン依存となることもあります。
とくにMODY5と呼ばれるタイプでは、腎嚢胞や尿酸異常、生殖器異常がみられ、ネフロン形成不全から腎機能の低下をきたし、腎不全にいたるケースが少なくないことが分かっています。
欧米白人では、程度の軽いケースが多く、網膜症や腎症なども生じにくい、または進行しにくいといい、Hattersley教授によると、もっとも劇的な症例で、診断後6カ月以内でインスリン療法を生涯続けなければならないだろうとみられていたが、経口薬の治療のみで良好な血糖コントロールを持続できることが示されたといいます。
単一遺伝子型糖尿病のさらなる理解へ
Hattersley教授は、Exeter大学に遺伝学研究室を開設、1995年に糖尿病の遺伝子タイプに関する研究をスタートさせました。そしてMODYの原因遺伝子として、現在までに15種類を特定することに成功、世界的な研究チームを結成し、英国のNHSはもちろん、世界87カ国の患者のために、遺伝子検査テストおよび診断サービスを提供してきています。
MODYのように単一遺伝子型の糖尿病で、その遺伝要因を発見、同定することは、治療と臨床ケアに革命をもたらし、疾患の正しい理解と適切な治療アプローチを実現することに寄与します。
同じ糖尿病とされるものにおいても、さまざまなタイプがあり、症状の改善や進行抑制には、それぞれに関する正しい認識と治療方針の決定、臨床ケアが実現されていかねばなりません。個別化医療としても同じことがいえ、こうしたさまざまなアプローチからの研究が進展し、より良い治療体制が築かれていくことが望まれます。
ちなみに、今回Hattersley教授が受賞した「EASD-ノボ ノルディスク財団糖尿病賞」は、EASDとノボ ノルディスク財団との連携で授与されるものであり、EASDが設立した特別賞委員会が受賞者を決定、ノボ ノルディスク財団が副賞となる賞金の資金寄付を行っています。

University of Exeter 発表資料
http://medicine.exeter.ac.uk/news/title_540517University of Exeter Diabetes Genes ホームページ
http://www.diabetesgenes.org/