女性の身体には、妊娠によって大きな変化が生じます。その変化は多岐にわたり、思いもよらなかった体調のトラブルにつながることもあります。近年、そうしたトラブルの中で増加しているのが、妊娠糖尿病というものです。
妊娠中ならまず注意したい妊娠糖尿病
これは、妊娠中、とくに妊娠後期に、hPLやエストロゲン、プロゲステロンといったホルモンが増加することで、耐糖能が悪化、インスリンの働きが低下するために生じる血糖値異常で、発症すると、将来の2型糖尿病リスクを増加させるほか、胎児の発育不全や機能不全といったリスク増を招くこと、早産や羊水過多、妊娠高血圧などの頻度も高いハイリスク妊娠となることなどが判明しているため、注意したい病気となっています。
では、どうすれば発症を防ぐことができるのでしょうか。実はごく簡単な、軽い運動で高い予防効果を得られることが分かりました。米国の医学誌「PLOS Medicine」の7月27日版に、その研究論文が掲載されています。
これまで、妊娠中に行う運動トレーニングを実行することは、おそらく過度の体重増加を防止したり、妊娠糖尿病を予防したりすることにつながるのではないかとみられていましたが、その有効性を科学的に示したものはなく、依然不明となっていました。そこで研究チームは、運動の実施と妊娠糖尿病発症リスクの関連性などについて、91人の妊婦を対象に、出産直前まで追跡、検証を行いました。
週3回の軽い運動でリスクが低減
研究チームは、まずBMIが28kg/平方メートル以上の91人の妊婦を対象とし、彼女らを2つのグループへランダムに分けました。1つ目のグループである46人には、35分間のトレッドミルにおける軽いウォーキングと、25分間の筋肉トレーニングを週に3回、トレーナーの指導のもとで行ってもらい、2つ目のグループの45人には、とくに運動は行わず、標準的な産科ケアのみを受けてもらっています。
この2つのグループで、妊娠12~18週のベースライン、妊娠後期34~37週時点における血糖値や血圧、皮下脂肪の厚さ、体組成など健康状態に関する30のアウトカムを調査しました。
その結果、皮下脂肪の厚さや体組成では、グループ間に有意な差は認められませんでしたが、妊娠糖尿病の発症は運動を行ったグループで2人と全体の4.3%にとどまったものの、運動を行わなかったグループでは9人にみられ、全体の20%と、約5倍の差が生じることが確認されました。
また、運動を行ったグループでは、収縮期血圧が、運動を行わなかったグループよりも有意に低くなることも分かっています。ちなみに拡張期血圧の値も、有意な差といえるレベルではないものの、運動グループで低い傾向がみられています。
この結果から研究チームでは、過剰体重増加に対する効果の確認は行えなかったものの、軽い運動を定期的に行うことで、妊娠糖尿病の発症リスクを低減させることができることが明らかになったとしています。
リスクを低減できたグループの実施した運動は、ごく強度の軽いもので、誰もが取り組めるものだったそうです。また、その運動メニューを完全にこなすことができなくとも、効果は期待できるとされており、特別に運動を制限すべき医学的理由がない場合には、体調管理に気をつけながら、妊娠中も軽い運動を継続して行っていくことがよいようです。
(画像はイメージです)

PLOS Medicine : Exercise Training and Weight Gain in Obese Pregnant Women: A Randomized Controlled Trial (ETIP Trial)
http://journals.plos.org/plosmedicine/1002079