凝固第X因子、プロテアーゼ活性化受容体2に着目
東北大学大学院薬学研究科の髙橋信行准教授、佐藤博教授、同大学大学院医学系研究科の伊藤貞嘉教授、大江佑治研究員らの研究グループは15日、血液凝固による糖尿病性腎症の増悪機序を明らかにし、新しい治療標的を同定することに成功したと発表しました。この研究成果は、米国心臓協会学会誌「Arteriosclerowsis, Thrombosis, and Vascular Biology」電子版に掲載されています。
日本においては、糖尿病の合併症として腎症を発症する人が年々増加しています。食事・運動療法や降圧剤などを用いた既存の治療法では不十分で、人工透析が必要となるケースも少なくありません。また、心血管合併症のリスクも高いため、予後不良であることが多く、腎症発症や進行を抑制する新たな治療法の開発が急務とされています。
これまでの研究で、糖尿病性腎症患者では、血液凝固が亢進していることが知られていますが、その病的意義はよく分かっていませんでした。血液凝固因子は「止血」という生理作用のほか、プロテアーゼ活性化受容体の活性化を介して、さまざまな臓器障害に関与するとされています。
そこで研究グループでは、活性化凝固第X因子からプロテアーゼ活性化受容体2への経路の役割に着目、マウス実験を行っています。
すでにある薬の応用も、新規治療の確立に期待
研究グループでは、まず凝固第X因子阻害薬を糖尿病性腎症も出るマウスに投与しました。すると、尿中アルブミン排泄量や腎臓の組織障害が改善していることが明らかとなり、さらにプロテアーゼ活性化受容体2欠損糖尿病性腎症モデルマウスでも、同様の効果を確認することができたのだそうです。
また培養細胞を用いた検討により、腎症の改善が炎症応答の抑制を介している可能性が示唆され、糖尿病性腎症の増悪機序を見出すことに成功したとしています。
これらから、活性化凝固第X因子の上昇と、プロテアーゼ活性化受容体2が新規治療標的になると考えられます。凝固台Xa因子阻害薬については、すでに心房細動などによる血栓・塞栓症予防薬として使用されているため、これを糖尿病性腎症に応用することが有効な方法として期待されます。
また、選択的プロテアーゼ活性化受容体2阻害薬は、凝固阻害薬と比較して、出血リスクを軽減するものになると想定されることから、研究グループでは、ここにおける創薬研究の発展が望まれるともしています。
(画像はプレスリリースより)

東北大学大学院薬学研究科/東北大学大学院医学系研究科 プレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/tohokuuniv-press20160615_01「Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology」:Coagulation Factor Xa and Protease-Activated Receptor 2 as Novel Therapeutic Targets for Diabetic Nephropathy(該当論文)
http://atvb.ahajournals.org/content/2016/06/09